サンタさん

15年も前の話しになる。
一緒に暮らしていた姪の話だ。

当時3歳だった姪は誰から見てもびっくりするくらい頭の賢い子だったと思う。

姪には1歳年上の姉がいるのだか、二人の性格は真逆。

4歳の姉はお歌が大好きで天真爛漫。
3歳の妹は何事にも慎重で物事をよく考える。

そんな二人にクリスマスというイベントが訪れる。

当時二人の姉妹の父親はシングルファザーで、父親の両親と兄、そして妹の私と暮らしていた。

クリスマスの日、ケーキを囲みながら母が姉妹にこんな話をした。
『お利口さんにしていたからサンタさんがプレゼントを届けてくれるかもね』
ニコニコの母の優しい笑顔と穏やかな口調。家族全員が、ささやかな幸せを感じていた。

姉妹の姉が唐突に母に聞く。
『サンタさんはプレゼントをどこに置くの?』
無邪気いっぱいでそれは可愛くてしょうがない。

姉妹の父親が答える。
『確か枕元に置くってパパ聞いたことがあるよ。』
姉の頭を撫でながら微笑みそう言った。

姉は満足そうに納得しケーキを頬張る。
その横で今にも泣き出しそうな3歳の妹が、ケーキを見ながらうつ向いていた。

気がついた姉妹の父親が妹に訪ねる。
『どうした??そんな泣きそうな顔をして。具合でも悪いの?』

妹は目一杯首を横に振り、目に涙を溜めてこう言った。
『サンタさんはどこからおうちの中に入るの?玄関?お窓?』
まるで何かに怯えていて声が震えていた。

姉妹の父親が答えた。
『玄関でもお窓からでもないよ?どうして聞きたいの?』

妹はその言葉を聞いてさらに怖がってしまった。
『じゃ、どうやってプレゼントを置くの?煙突もないし、サンタさん入って来れないよ?』

姉妹の父親がちょっと困りながらも答える。
『んー。サンタさんは寝てる間にプレゼントを置くからパパもよくわからないんだよね』頭をかきながら伝えた。

妹の恐怖は絶頂まで達してしまい、ついに大泣きし始めた。

その場にいる大人たちはみんな大慌て。姉妹の父親が妹を抱っこして泣いてる理由を聞く。

妹はわんわん泣きながら父親に言うのだ。
『おうちの玄関からも窓からも入ってこないんでしょ?お化けなんじゃないの?サンタさん嫌いー!!!』

あまりにも泣いている理由が可愛すぎてゲラゲラ笑う大人たち。構わずケーキを頬張っていた姉がキョトンっとした顔で大人たちを見ていた。

まさかのお化けという発想には、私たちも面白すぎて大笑いしたが、そこまで考えられる子であることを誇らしくも思った。

次の日の朝。
姉妹の妹はお化けの存在をすっかり忘れ、サンタさんからもらったプリキュアのおもちゃで満足そうに遊ぶのでした。まだまだ3歳だねっと母と微笑むのでした。